廣瀬隆夫
耕さない田んぼというテレビ番組を見た。今まで、田んぼは、春に苗を植えて秋に収穫が終わると、水を抜き、機械を入れて耕していた。耕すと土がやわ らかくなり、稲の根が貼りやすくなるという理由からだ。しかし、ある人が普通の田んぼが不作だった冷夏のときにも、ちゃんと今まで通り、穂を付けている田 んぼがあったのに注目した。それがどんな田んぼかというと、お年寄がやっている田んぼであった。機械も無い、労働力も無い、ほったらかしの田んぼが意外な ことに冷害に強かった。
耕さない田んぼは、収穫が終わっても田んぼから水を抜かない。一年中、田んぼには水があることになる。すると、そこに生きものが湧いてくる。タニシ が来る、カエルが来る、トンボが来る、そして、鳥が来る。一つの生態系が形成される。田んぼが随分にぎやかになる。このような田んぼで作った稲は、耕した 田んぼに比べて太くて根がしっかり貼っているということだ。土が固いことがストレスになり、根や茎が丈夫になるというのだ。
この話、どこかで聞いたことがある。国を治めるのは、小魚を鍋に入れて煮るようなもの。煮えたか煮えたかと、箸でつついていると、姿が崩れて無残な 姿になる。魚料理をうまく作るには、何もぜず、放っておくに限る。これは、4000年も前の中国の賢者、老子の言葉だ。今の世の中を見渡すと、こんなこと が多いんじゃないか。無駄なことをやって、自分で仕事を増やして、結果的にうまくいかないこと。通る車の無い高速道路。無意味な護岸工事。大量に捨てられ る梱包材。見る人のいない深夜のテレビ番組。どれも無駄な努力が生んだ、無くてもさほど困らないものだ。何もやらないで、自然のままにしておいた方がうま くいくことも多いんじゃないか。
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